分解と再構成の果てに

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そこは、透き通るような薄く黄色い膜に覆われていた。
水の中にいる時に聞こえるような静かな音が響き、私の足元はもちろんの事、見渡す限り、
見上げる所一面が膜で覆われ、ゆらゆらと揺れていた。
その中で、私はもうあと一歩で、目の前の男の背中に左手が届くところまで来ていた。
そして、ついに私の左手はその目の前の男の背中を捕えようとしていた。
左手を出した瞬間、その目の前の男は私の方へ振り返り静かに呟いた。
「じきに、お前の・・・」
と最後の言葉が聞き取れないまま、
その男はまるで、パウダースノーが風に舞う様に消えていった。
わたしがパウダースノーを見上げていた刹那、私の背後に誰かの左手を感じた。
私は振り返った。
「じきに、お前の身体も消えていくぞ」
と私自身が言ったような気がした。
パウダースノーは分解と再構築の果ての産物なのか。

我々は、生きている限り動的平衡が繰り返される。
ファンタジー
公開:21/09/14 07:59
更新:21/09/14 08:27

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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