ヒーローの背中

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私は、子供の頃から映画が好きだった。
映画に出てくるヒーローのように、カッコ良く人を救う大人になると思っていた。
しかし、人生はそう甘くない。
憧れたヒーローは何があっても諦めず、悪を討つ強さがあった。
自分はと言えば。失敗し、挫け、心折れ。ヒーローにはなれないと、心底思い知った。

…もう、終わりにしよう。

私は死を決意し、最後に映画を見ることにした。
大好きだった、映画。人生最後の映画。
昔大好きだった映画が、コロナ禍でリバイバル上映していたのは幸運だった。まるで自分を見送るために用意されたようだ。

チケットを買い、席に掛ける。
映画の始まる、ワクワク感。
暗転で感じる、緊張感。
…昔のままだ。

懐かしいオープニングを聞いた瞬間、頬を伝うものを感じた。
…ヒーローになれなくてもいい。映画を、この世界を、もっと楽しみたい。
涙で滲んだ視界の中。私のヒーローは、今日も人を救った。
公開:21/09/15 18:00

お弁当係

2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
 

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