二宮尊徳の名残

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「先生、何で教液の事を黒板っていうのですか?」教液とは教壇液晶の事である。
「昔の名残です。見た目が変わっても名前だけが残る事はよくあるんです。これもそう」
教師はチョークこと教液用タッチペンをかざした。
「全体朝礼です。前に注目」黒板に校長の姿が映し出された。
「おはよう。今日は皆さんに報告があります。我が校は創立10年の若い学校です。良い風習をもう一度復活させようという試みで石像を建てる事になりました」
薪を背負い読書をしながら歩く少年の石像が映し出された。
「二宮尊徳という人で貧しい家庭で働きながらも勤勉に学んだ偉人です。江戸時代の格好では古すぎるので分かりやすい姿で建設します」

翌月
生徒が見守る中、除幕式が行われた。
程なく年配教師の指摘により本来の意味を表す格好では無いことが発覚する。

新しい二宮尊徳像は四角いリュックを背負いスマホ片手に自転車に跨っている姿をしていた。
SF
公開:21/06/04 11:43

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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