判別の池

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森に小さな池と小屋がある。そこが俺の職場。池での繁殖ビジネス。繁殖させるのはカモより大きくアヒルより小さな水鳥で人工的生命体だ。生命化学的に殖やせるのだが自然繁殖がリーズナブルらしい。それで俺の仕事もあるわけだが。
俺は彼らをカモルと呼ぶ。カモとアヒルのあいだ。カモルは成長すると池から流れる川を泳いでくる。そのとき俺は雌雄を判別する。くちばしで水面を、オスは一度、メスは二度突くのである。判別は簡単ではない。とっさの動きで判別する。素人にはできない。俺は熟練者。
オスのカモルはそのまま泳がせ下流で捕らえて市場に出す。メスは網で捕らえ池に戻す。池でまた卵を産むのである。
ある日、いつものように池から出てくるカモルを判別していたが、一羽のメスと目が合った。何か意思が通じたような感じ。俺はそのメスを捕らえ、池に放さず家に持ち帰った。それからずっと彼女は俺と同居している。俺のパートナーである。
その他
公開:21/06/04 11:06

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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