余さないと
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カリブ海に浮かぶ斑らな島国「甘い潮騒」のアシッド国王は日本のアイスクリームが好きだった。とりわけフタについたクリームを好み、フタだけを舐めて、あとは捨ててしまう日々を送った。私はその捨てられたクリームを食べるために雇われた。世界一の甘党。余さずに食べる余さナイトの称号もある。
今朝そのアシッド国王が死んだ。
私はアシッドに捧げるためのアイスクリームを大量に用意して、そのフタについたクリームだけをこそぎ集めて玉手箱に詰め、そのまたフタについたクリームだけを冷たくなった彼のくちびるにのせた。
こんなときはバニラにするべきだろうと側近たちは私に意見したけれど、彼が愛したのはチョコミント。ターコイズブルーのくちびるが美しく悲しい。
棺桶のフタについたアシッドを王族たちが寄ってたかって舐める葬儀。それを見ていたら涙が止まらなくなったけれど、私はこれから彼らが捨てた残りを食べなきゃいけない。余さずに。
今朝そのアシッド国王が死んだ。
私はアシッドに捧げるためのアイスクリームを大量に用意して、そのフタについたクリームだけをこそぎ集めて玉手箱に詰め、そのまたフタについたクリームだけを冷たくなった彼のくちびるにのせた。
こんなときはバニラにするべきだろうと側近たちは私に意見したけれど、彼が愛したのはチョコミント。ターコイズブルーのくちびるが美しく悲しい。
棺桶のフタについたアシッドを王族たちが寄ってたかって舐める葬儀。それを見ていたら涙が止まらなくなったけれど、私はこれから彼らが捨てた残りを食べなきゃいけない。余さずに。
公開:21/06/04 10:48
更新:21/06/04 10:51
更新:21/06/04 10:51
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