皐月

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「あやめー!今日こそ自己新!」
数メートル先の部員に、あやめは腕を伸ばし返答する。そうして、ひと呼吸、つま先を鳴らし、構え、ひと呼吸。合図を受け。タータンを踏み込む。

「あやめは?」「まだ練習するって」部員たちはツツジの花を過ぎた。


日の延びたグラウンドを一人、走っていたあやめは足を止めた。
「この間の課題だって直ってたのに。…あなたも、一緒なのかな」しゃがみ込んだ先の、一角だけ緑のそこを見た。「皆きれいなのに、咲き後れて」「それはサツキ」声に顔をあげる。
「橘」
ツツジ、もといサツキを間に目が合う二人。
「こっちのツツジと似ているけど、遅咲き。どの花も一斉に咲いたら大変でしょ?ここで見限っちゃったらもったいないね。美しいのに」橘は、凛としたその新葉に触れた。

「うわっ」
「手伝って」
サツキの向こうへストップウォッチを渡して、あやめは髪を結い直す。
花開くまであと少し。
その他
公開:21/06/05 04:53

真月。

ご覧いただき ありがとうございます。
よろしかったら読んでみてください。
作品の絵も自身で描いております。

コメントや☆など とてもありがたく思っております。ありがとうございます。
のほんとしたお話や癒しとなっていただけるようなお話を描けたらと思っております。

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