地中削孔マシン

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マシンは地面を掘り始めると垂直に下降して掘った。自らの大きさより一回り大きな径の穴を掘って土を巧みに後方に除けてゆく。ある程度掘ると水平方向に向きを変えて周囲を削って小さな空洞を作る。そこからさらに水平方向に掘り進んだところで斜め上45度にどんどん掘って地表へと出た。
土をたっぷり入れた透明ガラスケースを見ていた研究者たちは言った。
「プログラム通りだ」
「このマシン なら立派な穴が掘れる」
「オオクロアリ一つの巣に五台もあればいいだろう」
「さっそく量産しよう」
研究者は5ミリほどのマイクロマシンを手にのせて言った。

オオクロアリの種が急速に減少しはじめたのは最近のこと。調査するとオオクロアリの穴掘り能力が大きく減退していることがわかった。オオクロアリは絶滅危惧種に認定された。生物多様性持続研究所ではオオクロアリ用穴掘りマイクロマシン を開発し、ようやく実用化にこぎつけたのであった。
その他
公開:21/05/31 17:52

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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