懐かしの電話ボックス

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公園に人の行列ができている。角の公衆電話ボックス。昔からの電話ボックスに何が?と列に並んだ。
案内人が説明する。「この電話から相手の場所まで見えますよ」「ビデオ電話ですか?」「いいえ、仮想空間です」
ボックスに入った人が電話をかけると床が下がって降りてゆく。「ああして仮想空間に入って、相手と会話できます。一回一分限りで千円です」
順が回ってきた。ボックスに入ると受話器をとって千円を入れる。番号ボタンを押す。実家の番号。床が下がって薄明るい部屋。田舎の家だ。仏壇から線香の匂い。畳の間に母親が座っている。「やあ」「しばらくね」そのうちに足元が上がって元のボックスへ。もう一分たったのか。
また列に並んで順番を待った。今度はしばらく連絡がない彼女にかけた。同じように床が下がって暗い部屋のなか、バーのようだ。カウンターに彼女は嬉しそう。隣にイケメンが楽しく話をする。バツが悪い。一分間って長い。
その他
公開:21/06/02 17:33

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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