固める空気
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右手をぐっと手を握り込んだ。何もなかった手の中に、堅すぎず、かといった粘土ほど柔らかくないなにかがある。空いている左手で手のひらを触れようとすると、確かに形あるものの感触を感じられる。私の手は空気を固めることができるのだ。
空気さえあれば、粘土のように形を作ることができる。傘のように固めて雨を凌いだり、椅子のように固めて座ってみたり。この空気のいいところは、10分ほど経つとまた空気に戻るので、ゴミにもならない。これで一攫千金も夢ではないと思った。
ゲリラ豪雨に見舞われた帰り道、空気で傘を作った。すると目の前から見知らぬ同い年ほどの男が、この大雨にもかかわらず、濡れずに立っていた。自分と同じ能力を持っていると直感した。
男が目の前まで近づいてくる。声をかけようとするとうまく声が出なかった。男の握り拳か左脇まで突き出された。
男がぼそっと一言。
「同じ人はふたりいらないよ」
空気さえあれば、粘土のように形を作ることができる。傘のように固めて雨を凌いだり、椅子のように固めて座ってみたり。この空気のいいところは、10分ほど経つとまた空気に戻るので、ゴミにもならない。これで一攫千金も夢ではないと思った。
ゲリラ豪雨に見舞われた帰り道、空気で傘を作った。すると目の前から見知らぬ同い年ほどの男が、この大雨にもかかわらず、濡れずに立っていた。自分と同じ能力を持っていると直感した。
男が目の前まで近づいてくる。声をかけようとするとうまく声が出なかった。男の握り拳か左脇まで突き出された。
男がぼそっと一言。
「同じ人はふたりいらないよ」
ホラー
公開:21/05/29 23:32
ご覧いただきありがとうございます。
俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
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名作文学の朗読Youtubeを行っています。
『http://www.youtube.com/@akky_roudoku』
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