詳しい

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「あ、父ちゃん、帰ってきた」
ちょうど観ていた番組がCMに切り替わったとき、夕飯のハンバーグを噛みながら娘は、何食わぬ顔でそう言った。
本当? と思うが早いか、ごく近くで車のドアの閉まる音がする。すごい。
「どうしてわかったの?」
「犬がね、教えてくれるの」
「犬」とは、私たちが住むペット可のアパートの下の階の男性がベランダで飼う、あの柴犬とシベリアンハスキーのミックスのことだろうか? 
「犬が、『父ちゃんのご帰宅ー』なんて鳴くの?」
「うん」娘は頷いた。「母ちゃんの帰りが遅いときも鳴くんだ」
高く、それこそ犬が猫なで声で鳴くそうだ。きっと好かれてるんだよ、と娘は言い足した。
「ただいま」父ちゃんのご帰宅。
「犬は飼い主に似るって言うもんね」
「ん? なんの話だ」
交ざったばかりの父ちゃん同様に、私にもわからない。娘は一体なにをどこまで知ってるのだろうか?
ミステリー・推理
公開:21/05/29 18:15
更新:21/05/30 08:54

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