殺人、完遂せず

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俺は人を殺しに行く。明確な理由なんて無い。俺を認めてくれないこの社会に一矢報いるためだ。俺は目をつけていた老婆が住む家に行って周りを確認して慎重に入った。だが、老婆は留守だった。俺は落胆し、一度出直そうと家を出ようとした時に後ろから音が聴こえた。
「わん!」
犬だ。その犬は尻尾を振り、遊んでくれと言わんばかりの表情だった。
「邪魔だ。どけ。」
俺は追い払おうとしたが、犬は離れなかった。遊びはもう始まっているようだ。
「わん!」
「なんだよお前。」
俺は動揺した。俺なんて誰からも必要とされてないはずだ。なんで俺なんかに。
「わん!」
「遊びたいんだな。」
俺は犬を抱き抱えた。昔、小さい柴犬を飼ってたな。涙を拭っていた。
次の日の新聞に「番犬ロボット、勇敢にも家守る!」と一面を飾った。犬の飼い主は語った。
「確かにうちの犬です。あの子は不良品でね。追い返すどころか誰にでも懐いてしまうの。」
SF
公開:21/05/29 12:40

プロペラがかり

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