ぬくもり

0
2

生まれた場所は、固い石の上だった。
辺りを見渡しても誰も僕を見ない。
二本足のカラフルな生き物が器用にそこらを動き回る。
そんな彼らを見つめていると、そんな二本足の生物の中でも一際ちっこいのが僕の前にうずくまった。
僕の顔をじっと見ている。
それはしばらく動かずに固まった後、その口角をグイっと上げた。
「——————!!」
それはいきなり大きな声で鳴くと、その前足を僕の両脇に入れ、僕の体を持ち上げる。
抵抗する間もないまま、僕の体は宙に浮いて、進んだ。
向かった先には僕の体を掴むものより大きな生き物が。
大きい方が柔らかく鳴くと、小さい方は大きく鳴いて応える。
うるさい。僕の耳元で鳴くんじゃない。
抗議の声を上げると、小さい方がまた元気に鳴いた。
大きい方の前足が僕の頭に伸びてきて、僕の頭を包み込む。
何故か少し前に、同じようなぬくもりを感じていたことを思い出した。
その他
公開:21/05/27 11:11

ratys

あったかくてせつない、もしくはせつなくてあったかいようなお話が好きです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容