居眠り欲

サトウ氏はビルが立ち並ぶ街の一角に来ていた。駅から少し離れた所にその店はあった。
「居眠りカフェ『うたた寝』にようこそ。」
「予約していたものですが。」
「はい。それではこちらの部屋で待機していて下さい。」
彼は部屋に案内された。部屋に入ると十代の男女が三十人ぐらい座っていた。彼は空席に座った。間もなくして、五十代ぐらいの男性が入ってきた。
「起立、礼、着席。」
ここは高校の教室を模した空間だった。ここで彼は思い切り居眠りをした。学生時代を思い出しながら、彼は優越感に浸った。柔らかいソファなんて必要なかった。
小一時間が経ち、彼は部屋を出た。
「どうでした？」
「実に良かったんだが、あそこにいる人達は大変ではないかね？」
「いえ、あれは全て機械です。」
「そうか。なら良かった。」
最高峰の科学を駆使してやることが居眠りでそれに金を払う客がいるなんて平和な国だ。サトウ氏は微笑し駅に向かった。