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私は子供の頃、海で溺れていたところを人魚に助けられた事がある。美しい人だった。
私はおぼろげな意識の中、その人に手を伸ばす。
「また…会えますか…?」
その人は無表情で私の手にそっと自身の鱗を握らせた。
口をパクパクさせ、何か言っているようだがその声は私の耳に入って来なかった。

私は大人になった今でも海で人魚を探している。
あの人の鱗はとても美しい青色。透明感のある鱗を太陽に向けると鱗は海のように光を反射する。
『綺麗な鱗ね』
海の中から声をかけてきた女性。その人の下半身は魚だった。
やっと出会えた人魚。でも私に感動はない。だって私が会いたいのは上半身が魚の人魚だ。
下半身が魚の人魚に、上半身が魚の人魚の話を聞いてみた。
『その人なら、今の時期生まれ故郷の山に戻っているはずよ』
その言葉を信じ、海ではなく山を探してみると青々と茂る緑の中、足をばたつかせ川を泳ぐ上半身が魚の人魚を見つけた。
公開:21/05/24 20:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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