一丸となって
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さよが御殿女中となったのは、梅の蕾が綻び始めた頃。それから三月ほど経ったある日、殿様の近習から女中下男に至るまで一所に集められた。
何事かと怯えるさよの前に現れたのは、何と家老。
家老は一度咳払いをして「皆の者!」と、老齢に似合わぬ重厚な声で一堂に呼びかけた。
「分かっていると思うが、もうすぐあれがやって来る」
(知らないよ。あれって何?)
「この城を守り抜くには、皆が一丸とならねばならぬ」
(まさか、戦?嘘、怖い!)
「物は既に用意してある。これじゃっ」
ザッと開けられた襖の向こうには、
「…桶?」
見事に積み上げられた桶の山。
「さあ皆の者!今年も雨から城を守るのじゃ!」
「おー!」
「ええ?雨ぇ?」
聞けば、この城は涙も無駄に出来ぬほど貧乏らしい。梅雨の長雨では、城の中も雨ザーザーというのに修繕する金子は無い。
斯くして、城内総出の桶運び競争は、梅雨の間中続いたのだった。
何事かと怯えるさよの前に現れたのは、何と家老。
家老は一度咳払いをして「皆の者!」と、老齢に似合わぬ重厚な声で一堂に呼びかけた。
「分かっていると思うが、もうすぐあれがやって来る」
(知らないよ。あれって何?)
「この城を守り抜くには、皆が一丸とならねばならぬ」
(まさか、戦?嘘、怖い!)
「物は既に用意してある。これじゃっ」
ザッと開けられた襖の向こうには、
「…桶?」
見事に積み上げられた桶の山。
「さあ皆の者!今年も雨から城を守るのじゃ!」
「おー!」
「ええ?雨ぇ?」
聞けば、この城は涙も無駄に出来ぬほど貧乏らしい。梅雨の長雨では、城の中も雨ザーザーというのに修繕する金子は無い。
斯くして、城内総出の桶運び競争は、梅雨の間中続いたのだった。
その他
公開:21/05/25 21:47
更新:21/05/26 19:37
更新:21/05/26 19:37
物書き初心者です。一つずつ勉強していきます。
しばらくぶりでございました!この頃ずっと余裕が無い日々を送っておりましたが、どうにかこうにか戻って来ました(^_^;)
まだもう少しカメさん歩きになりそうですが、またまた頑張ります!
駄文ですが、どうぞ宜しくお願いします。
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