ソーダファウンテン

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「お前さあ、ちょっと付き合えよ」
帰り支度をしていると、先輩に声をかけられた。
「今日は早く帰りたいんですけど……」
「まあ、ちょっとだけ」

そうして訪れた店は、カウンターのみの小さなバー。席に着くと、すぐに小瓶が差し出される。「何ですか?コレ」先輩に聞いてもニヤニヤするばかり、何だか腹が立ってきた。

いや、既に、腸は煮え繰り返っていた。新しいプロジェクトは進まないし、丸投げ上司は指示が曖昧だし、仕様書は繰り返し変更されるし、お気に入りのキーボードが生産中止になったし、後輩は「今日、彼女と約束あるんで残業ムリっす」とかいうし、はぁ、知らねぇよ!俺だってデートしたいわ! 苛立ちが沸々と湧き上がりピークに達したその時……

キュポンッ! プシューゥゥゥ

大きな音と共に、小瓶から盛大に水飛沫が吹き上がった。
カウンターには、すっかり気が抜けた僕とソーダ水。カラカラ笑う先輩の声が響いていた。
ファンタジー
公開:21/05/22 17:47
更新:21/05/23 22:06

辻浜立夏( 日本 )

ゆっくりとしたペースでも、書き続けていけたらと思っています。宜しくお願いします。
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