霧がかる三途の川

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今私は三途の川にいる。初めて訪れた感じはしない。
「夢だと思っていたがここだったのか」
幼少の頃、溺れて死にかけた際1度ここに来ていた。
確か…おいお前!と老人の声がし右手を掴まれた。
老人は何か言おうとしていたが気がつくと病院のベッドだった。
遺影でしか知らない祖父が助けてくれたのかと思った。
そんな生還も虚しくなる程ろくでもない人生だった。
散々人に迷惑をかけ犯罪にも手を染め、しまいに親の死に目にもあえなかった。
いっそあの時死んでいれば…

その時
霧がかる先に小さな人影が見えた。
近づくにつれて胸騒ぎが芽生える。
「おいお前!」細い右手を掴む。
まさかそんな事が…幼き私がそこにいた!
チャンスはあったのだ。
あの時老人は私をどうしたのだ!?
私はどうする!?

掴んだ手が空振った。もうそこに少年の姿は無い。
逡巡の後悔と期待は吐息の如く溢れ出し
やがて三途の川の霧となった。
ホラー
公開:21/05/24 12:34
更新:21/05/24 16:01

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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