バベルの塔

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あれから数千年――

神々の定例会議にて
ある慈悲あふれる神が、こんなことを言った。

「バベルの塔が崩壊して、数千年が経った。
 人類もすっかり、反省をしている頃だろう。
 そろそろ言語を統一してやっても、良いのではないだろうか」

神々はそれに同意し
そしてその神は右手をひと振りし、人類の言語を統一された。


その瞬間、世界の言語は統一され、意思疎通は容易なものとなり
世の総てが、通いやすくなった。

故に人類は、諍いをやめ、競争をやめ、あらゆる切磋琢磨をやめた。


国と国は融合し、男と女はぶつかり合わなくなり
殺生は止み、世界は靜かになった。


故に人類は、歩みを止めた。


最後に死んだ学者は、こう言い遺したという。

「世界の言語がばらばらであったからこそ、人は歩み寄ろうとしたのだ。
 すべてが統一されてしまっては、すべてに謎がない。
 ゆえに人類は、神によって亡ぼされた」
ファンタジー
公開:21/05/24 00:52
更新:21/05/24 01:31

よこたちかこ( 東京都 )

小学校5年生から、星新一が好きです。
頑張ってちょこちょこ、物語を書きたい。

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