嘘じゃないのに…

0
2

「あれ?ケーキがなくなってる…」
冷蔵庫を開けたママが首を傾げる。
「ケーキなら妖精さんが持っているよ」
私はママに教えてあげた。
「そんなこと言って!アンタが食べたんでしょ!」
拳骨を落とされ、怒鳴られた。嘘じゃないのに…
「ママ。そのケーキってテーブルの上にある奴じゃないの?」
お兄ちゃんが指をさす。ママはそれを見て「あれ?さっきはなかったはずなのに…」と呟き、「ぼーっとしていたのかしら…」と私に謝りもせずケーキを冷蔵庫の中に戻した。
私は悲しい気持ちになった。
でも、私以上に悲しそうにしている人がいた。妖精さんだ。
『ほらね。君以外、誰も僕の姿が見えていないでしょ?嘘じゃなかったでしょ?』
今にも泣きそうな顔でそう言ってくる。
『皆、昔は僕の姿が見えていたのにもうすっかり忘れちゃっているんだ…』
「私は…ずっと覚えていてあげるから」
私の言葉に妖精さんは凄く悲しそうな笑みを浮かべた。
ミステリー・推理
公開:21/05/18 20:55

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容