所詮、水槽の中
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今年は梅雨が例年より長いそうだ。部屋の湿度は常に80%を越えており、肌に不快感がまとわりつく。
じめじめ じめじめ
じめじめ いらいら
じめじめした部屋に不穏な空気を感じとった夫は、押し入れからシュノーケルとゴーグルを取り出し、装着する。そして、まるで水中にいるかのようにリビングを泳ぎだした。
「いやぁ、今年は実にいい湿度だ。ここまで部屋の中が湿っていると泳ぎやすい」
そう言うと、夫は部屋干ししてある洗濯物の間をすいすい通り抜けていく。
「ちょっと!ふざけて洗濯物汚さないでよね!」
怒鳴る私に、タオルの隙間から顔を出す夫。
「ほら、君も見てごらん」
しぶしぶ従い、ゴーグルを装着する。
とたんに、いつものリビングが水で満ち、私達は水槽の中の魚になった。水の流れに身を任せ、ふたりでゆらゆらとリビングを漂う。
「ね、梅雨も悪くないだろう」
悪戯っぽく笑う夫には、いつも敵わないのだ。
じめじめ じめじめ
じめじめ いらいら
じめじめした部屋に不穏な空気を感じとった夫は、押し入れからシュノーケルとゴーグルを取り出し、装着する。そして、まるで水中にいるかのようにリビングを泳ぎだした。
「いやぁ、今年は実にいい湿度だ。ここまで部屋の中が湿っていると泳ぎやすい」
そう言うと、夫は部屋干ししてある洗濯物の間をすいすい通り抜けていく。
「ちょっと!ふざけて洗濯物汚さないでよね!」
怒鳴る私に、タオルの隙間から顔を出す夫。
「ほら、君も見てごらん」
しぶしぶ従い、ゴーグルを装着する。
とたんに、いつものリビングが水で満ち、私達は水槽の中の魚になった。水の流れに身を任せ、ふたりでゆらゆらとリビングを漂う。
「ね、梅雨も悪くないだろう」
悪戯っぽく笑う夫には、いつも敵わないのだ。
公開:21/05/19 20:14
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