One Cup of Coffee

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「珈琲が好きです。」
そう言った男は、やかんに水を入れ、ガスコンロでお湯を沸かし始めた。そして棚から、白い紙フィルターと珈琲豆の入った缶、そしてコーヒーカップを2つ取り出した。彼は台に置いてあった豆の挽き機を手前に寄せ、その缶の蓋を開け、豆をその挽き機に投じた。彼がそのハンドルをくるくると回しはじめると、コーヒーの香ばしい、あのいい香りが部屋中に行きわたった。彼は、それぞれのコーヒーカップに紙フィルターをのせた。
ピィー。笛吹やかんがなった。お湯が沸き上った。
すると彼は棚からインスタントコーヒー「ネスカフェゴールドブレンド」を取り出した。彼は、紙フィルターの一つに挽き立ての豆を、そしてもう一つにそのインスタントの粉を、それぞれ大さじ2杯分ずつ入れた。そしてそこに湯を注いだ。
「自分、不器用ですから」と男は言いながら、豆の方のコーヒーカップを差し出した。彼は不器用以上に律儀な男でもあった。
青春
公開:21/05/17 05:55

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