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寡作で知られる現代美術作家の新作が評判である。作品を展示する部屋には一人ずつしか入れない。しかも五分まで。部屋には台座に灰色の塊がのる。近づいて作品に見入っていると塊はじわじわと観る人の顔そっくりに変貌する。その顔としばらく目を合わせたのち人が去るとただの塊に戻る。立体的な鏡と言えなくもないが、観た人は晴々と気持ちになる。ある種の恍惚感を人に与えるのである。
ある日、カップルが入り口に立つガードマンのスキを狙って二人で入った。二人が台座の前に立つと灰色の塊は四つの目、二つの鼻、二つの口の頭部となった。カップルは不思議な気分でやがてキスを始めた。濃厚なキスが進むと灰色の塊は口も目も鼻もなくなりどろりと崩れた。
五分たっても出てこないのでガードマンが部屋に入ると台座の足元で二人が抱き合ったまま倒れていた。台座には灰色の液体が溜まっている。作者の制作意図なのか事故なのか、明らかではない。
ある日、カップルが入り口に立つガードマンのスキを狙って二人で入った。二人が台座の前に立つと灰色の塊は四つの目、二つの鼻、二つの口の頭部となった。カップルは不思議な気分でやがてキスを始めた。濃厚なキスが進むと灰色の塊は口も目も鼻もなくなりどろりと崩れた。
五分たっても出てこないのでガードマンが部屋に入ると台座の足元で二人が抱き合ったまま倒れていた。台座には灰色の液体が溜まっている。作者の制作意図なのか事故なのか、明らかではない。
その他
公開:21/05/18 16:21
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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