ヒョットコ素っ頓教

素っ頓教には取り立てて教義はない。
素っ頓狂なことを一日一回行うのが、素っ頓教徒の証である。

素っ頓教はじわじわと民草の間に広がり、侮り難い勢力を持つ存在になった。

教祖は週に一回、教団の礼拝堂でヒョットコ面を被って裸踊りをする。
素っ頓教の信徒にとっては、大変有難くも可笑しい一大祭事である。
その日は大勢の信者が集まり、講堂には入りきれずはみ出してしまうほどだ。
教祖のヒョットコ踊りが始まると、信者たちは懸命にお捻りを投げる。大枚が飛ぶ。
教団は莫大な富を得る。

ある時、教団の礼拝堂が火事になった。幸い死傷者は出なかったが建物は全焼した。
焼け跡でも教祖のヒョットコ踊りは続き、信者たちは前にも増して集まった。お金も集まり、前よりも巨大な礼拝堂ができた。
そして各地に大小の礼拝堂が建てられた。

素っ頓狂な踊りをする人々が、日本中に溢れかえるのは、それから間も無くのことである。