どんな酔いも醒めてしまう、酒

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町はずれの風変わりな店に、一組の男女がやってきました。

「聞いてください、この人、いつもお酒に酔ってばかりなの」
「いやあ……ついつい、飲んでしまって」
「まったく。なんとか、なりませんか」

店主は、茶色い小瓶を差し出しました。

「では、こちらの酒など、いかがでしょう」
「酔ってばかりなのに、また飲ませようっていうの」
「これは不思議な酒。どんな酔いもすっきりと醒めてしまうのですよ」

男は、小瓶を一気に呷りました。

「ふう。久方ぶりにすっきりした心持ちだ。
 やる気が出てきたし、これまでのことをすっかり反省した。
 君とは、別れることにするよ」

男は、スキップしながら店を去りました。
残された女は、呆然顔です。

「申し上げました。どんな酔いも醒める酒だと」
「つ、つまり……この私に、酔っていたということなのね」
「いいえ。貴女を好きだと思うご自身に、酔っていらしたのですよ」
ファンタジー
公開:21/05/16 09:46
更新:21/05/17 14:29

よこたちかこ( 東京都 )

小学校5年生から、星新一が好きです。
頑張ってちょこちょこ、物語を書きたい。

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