父息子二人旅

壮大な自然を前に言葉を失う。
「これをお前に見せたかったんだ」
隣に立つ父は誇らしげに笑う。ジョッキを手にナイア・ラガーの滝の湧き酒を汲むと俺につき出してきた。
「キンキンに冷えて美味いぞ」
ジョッキを受け取り、喉へと流し込む。まさにビア・フォール！発泡酒では味わえない天然物の味が五臓六腑に染み渡る。父もごくごくと喉を鳴らす。
「…ぷはぁっ！こうしてお前と酒を飲む日を楽しみにしていた」
夕日を浴びーる父の顔はいつもより赤い。
「俺も昔、不安を抱えていた頃、親父にここに連れて来てもらった」
父は俺が抱えている不安に気付いていた…
「ほら見ろ。べろべろBEER」
思わず笑ってしまう。やめろよ。俺はもうガキじゃないんだぜ。いや、父にとって俺はいつまでも子どもか…
父は最近習い始めたというヒップホップも披露する。
その姿に一泡吹かされた。気が抜けた俺は苦笑いを浮かべる。アワアワするのはもうやめだ。