手向け屋

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「生者に餞を、死者には手向けを」
私は胸のクロスに祈りを込める。

 やけに若手業者の死が多い、裏稼業などに手を染めなければ、こんな死は迎えず済んだろう。せめて花々が苦しみを慰めるよう祈るだけ。

 教会のステンドグラスから光が指し、死者の旅路を祝福する様でもある。

「盛況のようだな、手向け屋」
「ええ、近頃やけに忙しい。街で戦争でもはじめましたか?」

車椅子の老人は笑うが、眼光は鋭い。

御前・梔 蓮十郎【クチナシレンジュウロウ】
梔財閥の総帥、裏社会の首領、あの方、呼び方はそれぞれだ。

「戦争?いい例えだが、これは害虫駆除だ、後始末を頼んだよ。手向け屋」

裏家業は死体が見つかると関連業者まで足がつく。そのため死体を人知れず手厚く葬る必要がある。それが手向け屋の仕事だ。

近々、必ず戦争は終わる。

花を用意しなければならない。

私は知っている。

梔の花を手向ける日は近い。
公開:21/05/15 18:29
更新:21/05/15 18:37
裏稼業図鑑⑤ 餞【はなむけ】

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

新シリーズ「人喰い病院」はじまりました。

荷物
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マイペースに描いていきたいです!

SSG1周年!

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