引き売り

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僕は、ぼろアパートの部屋の万年床に横になり、うとうとしていた。
このご時世でバイトはクビになり、貯金も使い果たし、来月は家賃も払えそうに無い。
ああ……腹が減った。
ここ一週間、水しか飲んでいない。
そして、とても身体がだるくて、とても眠い。

“きんぎょえ〜〜きんぎょ〜〜”

あっ…金魚屋さんだ。
この辺りは昭和の風情が残る下町で、アパートの前の路地を引き売りがたまに通る。

“さおや〜〜さおだけぇ〜〜”

今度は竿竹屋だ。
ゆったりとした売り声を聞いていると、ますます眠くてなって来た……




“と〜うふ〜〜”

……豆腐屋だ。
気付いたら、部屋に夕日が差し込んでいる…少し眠っていたようだ……

“かんおけや〜〜こつつぼぉ〜〜”

えッ…棺桶…骨…?

その時…身体がスウ〜と軽くなって、とても気分が良くなり…僕はゆっくりと、目を閉じた……
その他
公開:21/05/14 18:45
更新:21/05/14 19:02

杉本とらを( 東京 )

言葉遊びが好きで、褒めらると伸びるタイプです。
良かったら読んでやって下さい!

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