ある男の復讐

2
4

病室を突然訪れた老人は父の同窓だと告げ、娘は「意識は無いのですが」と面会を受け入れた。
見舞いの花を活けるため娘は席を外す。
「正直この手でお前を殺そうと何度も思った」死の淵を彷徨う男性に向かって語りかける。
「最期に教えてくれ」少し開いた病室の窓からは青空が眩しい。
「ついぞこの歳まで復讐を忘れない日は無かったが」閉じた目を睨む。
「お前を憎まねばならぬ理由が全く分からない」

「あの。もしかしてZさんですか?」花瓶を持った娘が戻っていた。
老人は頷く。
「実は父から伝言を頼まれてたんです」
「『理由はお前だ』…言えば分かるって」

途端、まるでハンマーで殴られたように老人は嗚咽を漏らし崩れ落ちた。
「これはお前の復讐だったのか!」
娘は狼狽する。
「俺は…あの時お前から催眠術を!…後の全ての人生が復讐に塗り固められた…画家への夢。幸せな家庭への憧れ…何一つ叶えて…い、今思い出したあぁ」
ホラー
公開:21/05/14 14:05
更新:21/05/14 14:15

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容