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地球の地上で。
「おじいさん。この公園、今年の夏は蝉の声がひとつも聞こえませんねえ?」
「そうじゃなぁ、ばあさん。なんでじゃろなぁ?毎年あんなに、うるさいほど鳴いているのに」

地下では。
「ヤバそうだから、今年は地上に出るのは自粛を要請します」
種族の長が宣言した。
「あぁ、しかたないかな。日の光は見たかったけどヨ」
「みんな。そうは言ってるけど、我慢できなくて地上に出て羽化して鳴いてるヤツが、けっこういるらしいゾ」
「しようがない奴らだなぁ」
「だけどヨ。人間がヤバいからって、俺たちもヤバいかどうか分からないだろ?根拠を示して欲しいね!」
「7年も我慢したんだ。この機会は逃したくない」
「いや。7年我慢できたんだから、もう1年くらい……」

セミも人間と同じで、意思統一は難しいようだ。

「おじいさん。なんだか土の下からガヤガヤと聞こえませんか?」
「ううん。天変地異の前触れかの……」
その他
公開:21/05/14 13:52
#ショートショート #短編小説 #ジョーク #蝉

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
ここに投稿する以外にも、自分のブログに同時掲載しているときがあります。

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