天衣無縫

その白い割烹着姿の若き女性は、たった一人で記者会見に臨んでいた。
「本当に作れるのですか？」記者から辛辣な質問がとんだ。「はい」彼女が答えると、無数のフラッシュが彼女を襲った。「別の論文ではそんな事はできないとありますが。」また質問が及ぶ。「できます。今からそれを証明します。」そう言った彼女は、突然着ていた割烹着を脱いだ。そしてそれを裏返し､裾の縫い目だけをカメラに向けた。「よく見てください。この縫い目を。」フラッシュが浴びせられる。「まつりでも、かがりでもない、ましてや、なみとは一線を画する全く新しい縫い方です。」おぉー､会場がどよめいた。「この段々とステップを踏むような縫製を私は見つけました。」これまでにない程の閃光とフラッシュ音に会場が包まれた。
「で、それは何ですか？」いきり立った記者が質問した。彼女は言った､
「ＳＴＥＰ裁縫。ステップ裁縫は、あります。」彼女自身は天衣無縫だった。