日替わりママ
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「お父さん、何やってるの」
「おお、ちさ。塾の帰りか」
近所のスナック『朱美』から、真っ赤なドレス姿の父が客を見送りに出た所に出くわす。
「おお、ちさ、じゃないよ。その格好は?」
「ママの朱美さんがぎっくり腰やっちゃってさ。常連のやつらと日替わりでママしてんだ。何か食ってくか?」
返事の代わりにお腹がぐうと鳴った。
「ちさちゃん、ママの牛すじカレー食べる?」
アルバイトの珠奈がママと呼ぶ父を見た。
「ぷっ」
「笑うなよ」
「この中では綺麗な方でしょ」
常連客が一斉に笑いだす。
「お休みにすれば良かったのに」
常連客と誰が一番ママらしいか盛り上がっている。
「あのね、ちさちゃんの為でもあるんだよ」
「え?」
「近くのコンビニなくなっちゃったでしょう。塾の帰り、何かあったら駆け込めるように、『朱美』の明かりは消したくないって」
「お父さん、そんな事を」
父は脛毛を剃った脚で踊っていた。
「おお、ちさ。塾の帰りか」
近所のスナック『朱美』から、真っ赤なドレス姿の父が客を見送りに出た所に出くわす。
「おお、ちさ、じゃないよ。その格好は?」
「ママの朱美さんがぎっくり腰やっちゃってさ。常連のやつらと日替わりでママしてんだ。何か食ってくか?」
返事の代わりにお腹がぐうと鳴った。
「ちさちゃん、ママの牛すじカレー食べる?」
アルバイトの珠奈がママと呼ぶ父を見た。
「ぷっ」
「笑うなよ」
「この中では綺麗な方でしょ」
常連客が一斉に笑いだす。
「お休みにすれば良かったのに」
常連客と誰が一番ママらしいか盛り上がっている。
「あのね、ちさちゃんの為でもあるんだよ」
「え?」
「近くのコンビニなくなっちゃったでしょう。塾の帰り、何かあったら駆け込めるように、『朱美』の明かりは消したくないって」
「お父さん、そんな事を」
父は脛毛を剃った脚で踊っていた。
その他
公開:21/05/13 23:48
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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