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競馬新聞片手に次来る馬を予想していると情報屋を名乗る男に声をかけられた。
何でもこの男、今日のレースは全部当てているらしい。
「アンタも俺の情報買わないか?安くしておくよ」
首を横に振る。遠慮しておくよ。
競馬新聞に視線を戻し、決めた馬券を購入する。
結果は…負けだった。
「だから言っただろう。ほら、俺のさっきの予想。俺の情報を買った連中を見てみなよ。み~んな勝っているよ。だからさぁ、アンタも俺の情報買いなって。新聞なんて薄っぺらいものには薄っぺらい情報しか載ってないよ。真なる情報、分厚い情報はこのぶ厚いたらこ唇から生まれるんだ。たらこは多来幸(たらこう)。アンタに幸運をもたらすぜ」
その男の口車に周りにいた予想客が次々と食いついた。
それでもやっぱり私は首を横に振る。遠慮しておこう。
何故かって?
あの男の口の奥、舌が2枚見えたからさ。
人の心を操る情報だけは豊富と見える。
公開:21/05/12 20:29

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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