ボタン

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深夜、男は酒に酔って帰って来た。
マンションのエレベーターに乗ったのだが、相当に酔っていて目標が定まらず、階のボタンを手当たり次第適当に、いくつも押した。
エレベーターが動き出し、男はエレベーターの壁にもたれかかり、ぼんやりと階数表示を眺めていた。
すると、なんとなく体に重苦しい感覚を覚えた。
「なんだか、変な感じするな……」
 エレベーターは、ウウウゥ、シュイ~ンと低音を響かせ始めた。そして、スピーカーから男性の少し鼻に掛かった声のアナウンスが流れてきた。
『ご乗車ありがとうございます。このエレベーターは月面行き快速特急です。終点、月面まで途中の階には停止いたしません。ただいまの時間は、折りたたみイスがご利用になれます。壁のハンドルを引いてイスを引き出し、ご利用ください。次の停止階は月面です』
その他
公開:21/05/12 14:13
更新:21/05/12 14:14
#ショートショート

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
ここに投稿する以外にも、自分のブログに同時掲載しているときがあります。

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