続・春来る

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ノミの心臓を持ち、ノミの脳みそを持つ男、渾名ノミオはピンク色の小さな丸いシールを台紙に貼った。今年もやってきました「ヤマザキ春のパンまつり」。3年前は期間誤認で2点足らず、一昨年は計算ミスで僅か0.5ポイント足りず、昨年は昨年で交換期間を失念し無情にもあのスマイルディッシュを手にする事はできなかったのだ。彼の脳裏に昨年のコンビニ地団駄ふみふみ事件が蘇ってきた。ノミオはシール貼付台紙の合計が28点である事を確かめ、そしてカレンダーの16日に赤丸をつけた。そして今年こそはと決意した。
ノミのみぞ知る5月16日交換期限当日。ノミオはコンビニにいた。彼は店員に台紙を差し出した。真白な皿を手にした店員が奥から戻ってきた。「はい、どうぞ」、ありが…と言いかけた時だった。ノミオは手を滑らせた。ガッシャーン。皿が地に落ちた。「割れちゃいましたね、片づけておきます」その無慈悲なまでの言葉に彼は言葉を失った。
ファンタジー
公開:21/05/12 05:55

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