閑話休題１３

空津歩は柄にもなく妻に手紙を書いた。母の日という口実で、日頃の感謝を込めて筆を取った訳なのだが、なかなかどうして書くことが思いつかない。ショートショートであれば、少なくともオチだけ考えてすらすら書けたり、洒落た文句やお気に入りの表現の一つくらいすんなり出てくるのだけれど、日頃の感謝を伝える割には「いつもありがとう」であったり、「いつも伝えられないけど感謝しています」といった月並みな言葉しか出てこない。結局、時間がなくなってしまい、当たり障りのない感謝の手紙となってしまった。喜んでくれたからよかったけど、なんとも消化不良。はっきり言って駄文だ。ショートショート仕立てにすればよかったのだろうか。花束を添えたので機嫌は良かったが、負けた気がする。いつか花束に負けない手紙を書けるようになれたらいい。などと決意を新たにする連休明けの月曜日の夜。妻と子の寝息はどこか穏やかだ。