旅立ち
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春は旅立ちの季節。
たくさんの我が子達も、みな思い思いに私の元を離れて行った。
一人の末っ子を残して。
「ほら、あなたもお兄ちゃん達やお姉ちゃん達みたいに行かないと」
「やだ、ぼく、まだママといる」
グズグズ鼻を啜るこの子は、私にぴったり引っ付いて離れない。
私は末っ子にそっと話し掛ける。
「でも、もうすぐママは死んじゃうの。だから、このままじゃあなたも死んじゃうわ」
「それでもいいもん」
「私が嫌なの。私、あなたに生きて欲しいの」
風が吹く。
「今度はあなたがパパになるの。離れ離れになるけど、寂しくないわ。だって、私の可愛い子供達は、たくさんたくさんいるんだもの」
一際強い風が吹いた。
次の瞬間、末っ子は空高くふわりと飛び上がる。
「だから、あなたも寂しくないわよ」
飛んで行く末っ子を見送りながら、綿毛の無くなったタンポポは微笑んでいた。
たくさんの我が子達も、みな思い思いに私の元を離れて行った。
一人の末っ子を残して。
「ほら、あなたもお兄ちゃん達やお姉ちゃん達みたいに行かないと」
「やだ、ぼく、まだママといる」
グズグズ鼻を啜るこの子は、私にぴったり引っ付いて離れない。
私は末っ子にそっと話し掛ける。
「でも、もうすぐママは死んじゃうの。だから、このままじゃあなたも死んじゃうわ」
「それでもいいもん」
「私が嫌なの。私、あなたに生きて欲しいの」
風が吹く。
「今度はあなたがパパになるの。離れ離れになるけど、寂しくないわ。だって、私の可愛い子供達は、たくさんたくさんいるんだもの」
一際強い風が吹いた。
次の瞬間、末っ子は空高くふわりと飛び上がる。
「だから、あなたも寂しくないわよ」
飛んで行く末っ子を見送りながら、綿毛の無くなったタンポポは微笑んでいた。
その他
公開:21/05/10 14:39
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