1
2

港を出発する前、『にゃあ』と声を掛けられた。
青い瞳の猫、俺らが”そら”と名付け、可愛がっている猫だ。
そらに飼い主はいない。そらはこの港の皆の猫だ。
「今日もいっぱい釣ってくるからな!」
そらに約束すると沖へと出る。
空を見上げると一羽のウミネコが船を導くよう飛ぶ。その後を追い、船を走らせる。
ウミネコが船へと降りてきた。青い瞳のウミネコは『にゃあ』と鳴いた。
こいつも”そら”だ。聞けば俺達が漁に出ている間、猫のそらはどこを探してもいないらしい。
きっと猫のそらはウミネコになって俺達についてきたんだろう。
釣った魚を一匹くれてやるとそらは喜んでそれを食べる。
一足早く港へと飛び立つそらを見て、俺達も戻る準備を始めた。
港に戻れば猫のそらに魚を一匹与える。それを美味そうに食べるそら。食い意地の張った奴め。
満腹になったであろうそらの瞳を見つめる。
そらの瞳の青の中、二匹の魚が泳いでいた。
公開:21/05/11 20:27

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容