正義

6
6

ついに完成だ。通常のイヤホンとは違い外界の音を聴取することができるイヤホンである。体よく言った盗聴だろうと思ったそこの醜男共、恥を知れ。私はこのイヤホンで人助けをするのだ。
私は裕子ちゃんの家へと向かった。裕子ちゃんの部屋は玄関の裏手二階の一室である。なんだ、盗聴ではないかと言いたいのかね。無論、盗聴ではある。
しかし問いたい。悪は全て悪なのであろうかと。
今、裕子さんは危機に瀕している。それは私以外の男と結ばれようとしているという事態である。その男は一見好青年であるが美味しそうなキノコほど毒性が強いものだ、裏では悪行の限りを尽くす大悪漢に違いない。裕子さんが悪の手に落ち、幸福な人生のレールを踏み外すことは阻止しなければいけない。裕子さんの幸福のトリガーは私であり盗聴はその大義のために必要不可欠なのである。
部屋を見つめ、正義の名のもとにイヤホンを耳に押し込んだ。
ホラー
公開:21/05/11 18:57

太郎犬( 日本 )

読書量も文章力も想像力もまだまだですが、ちょっとずつ投稿していきます。
コメントいただけると嬉しいです。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容