声がするメガネ

人の感情が分かるメガネが開発された。
どんなものにも、一長一短はある。
自分に向けられた他者の悪意も分かるので、使用者の精神的疲労はかなりのものだった。

勇気なく世間に怯える者にとってはすぐにヒーローになれる。
人の承認願望をすぐに満たしてくれる。
そんな、商品だった。

悲しみにくれている者が救いを求めた時、声が聴こえる。
相手の心情が分かり、すぐに救いの手を差し伸べられる。

このメガネの救いのニュースは全世界に広がる。
人の役に立ちたい人達がこぞって購入し、少しずつ、悲しむ人が減っていった。

ふと思った。
こんなもの無くても、人の気持ちを理解しようとすればいいだけだな。
人の幸せを願っても、何もしない自分。理解しようと努力できるんだから、後は行動するだけ。

そう思った。