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その善人は言った。「私が持っているこの盾は、どんなものでも突き通すことはできない。」
これを聞いた悪人はこう言った。「俺が持っているこの矛はどんなものでも突き通す。
ならば、善人よ。汝の愛人にその盾をつけ、俺のこの矛でついてみろ。」
善人は、矛を手にした。そして、盾めがけて突き刺した。
矛は盾を突き破り、愛人の胸を突き刺した。愛人は死んだ。我を失った善人は、真赤に染まったその矛で悪人をも殺めた。

向こうからもう一人、善人が歩いて来た。
その善人は言った。「私が持っているこの盾は、どんなものでも決して突き通すことはできない。だから、安心したまえ。私はこの盾で全ての人を守ってみせることができるのだ。」
あの矛を手にした前者は言った。
「ならば、善人よ。汝の愛人にその盾をつけ、俺のこの矛でついてみろ。」
 
ミステリー・推理
公開:21/05/10 05:55

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