辛いレモン

「も〜〜！飽きた！甘ったるい！！！」
彼がレモネードを飲みながら愚痴を吐く。
彼の母の仕送りのレモネードを、ちまちまと二人で消費している。
「けどレモンって苦いとも言うじゃない？私の好きな歌の歌詞にあったよ」
「そうだけどさ〜、レモンってどーも甘くて……辛いレモンとかないのかな」
その言葉を聞いて、私はふとあの日を思い出した。
「私、知ってるよ。辛いレモン」
「え！？マジであるの！？どこ産！？」
「あんた産」
「…え？」
「だって私のファーストキス、坦々麺の味だったもん」
その言葉に彼の彼はみるみる赤くなっていく
「……あ〜、レモン、ってそういう…。あの時ちゃんと歯磨きしたけどな……？」
「辛いのって案外取れないもんだよ」
あの日の思い出を楽しむ私に、彼は赤い顔のままそっと問いかけた。
「…甘いレモンは好きですか」
「…ええ。辛いのも好きだけど、甘いのもね」
今度のレモンは、甘い味がした。