奇譚【永遠の美女】

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 バーで女を口説いていた。
「きれいだね」
「永遠の美女って言われるわ」
「言うねぇ」

 家に来て。と女が言う。断わる理由もなく俺はついていった。

 タクシーから降りると、街灯のない暗闇を月明かりを頼りに歩く。

「ここよ」と女が指差す。
 洋館風の家で窓から灯りが漏れていた。
「家族が待っているわ」
 家族? なんだ一人じゃないのか。

 ドアを開けると、
 家族全員マネキンだった。

 リビングにいた家族は一斉に首をこちらに向けた。

 振り向くと、マネキンになったバーの女がカタカタと笑っている。

 気がつくとマネキンの家族に囲まれていた。

 朝。陽光に瞼を開ける。気を失っていたのか…夢か? 夢ではない。あの洋館にいることは確かだ。
 
「心配しないで」と、あの女が俺の手を引き、洋館の外に出ると、女は元の人間に戻った。女は言う。
「私、歳をとらないわ」
「永遠の美女ってわけか」
その他
公開:21/05/07 23:09
奇譚シリーズ マネキン 美女

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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