蛙の楽校

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散歩中、溜め池の水で――トォン、と音符が跳ねた。
レ#だと即座に判ったのは、音楽教師の習い性だ。――ミ。ファミ♭、レド。明白な音階を刻むのに興味を引かれ、池の中を覗き込む。
孵ったばかりのオタマジャクシが、水草の間を泳いでいく。丁度五線に並んだ部分を抜ける時、例の――トォン、が音符として機能するらしい。

しばらく耳を傾けていたが、次第にイライラしてきた。
何だこのでたらめな楽譜は。速度もおかしければ音も違う。曲が何かは察しが付くが、これではまともな合奏が出来そうにない。
「そこ、走り過ぎだもっとゆっくり!君と君は音階を守れ、変化なんてないぞ!……え~いもう、最初からやり直し!」

アシの茎を指揮棒に特訓する事数時間、池楽オタマジャクシ協奏曲『蛙の合唱』が完成した。
早くも肢の生えた生徒達に歌い送られ、溜め池を後にする。梅雨の頃には、成長した彼らの合唱が響き、また新しい音が生まれるだろう。
ファンタジー
公開:21/05/05 21:12
散歩道で見た シーズン4-⑨ オタマジャクシ協奏曲

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版

いつも本当に、ありがとうございます!

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