みのひとつ

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散歩中、雲行きが怪しくなり、手近な木陰へ避難した。
「ご厄介になりますよ」
頭を下げたのは先客がいたからだ。古びた祠にちんまりと、赤い前掛けのお地蔵様。誰が手向けたか、コップに山吹の花が供えてある。じきに降り始めた雨が、コップの水に波紋を打った。
「傘が無いので、ご勘弁を」
自前の手拭いをお地蔵様の頭へかぶせ、昔話の様だなと笑う。ご利益なぞ要りませんよ、お地蔵様。自分の足で散歩が出来る、それで十分です。
「確か、こんな歌がありました。七重八重花は咲けども山吹の……」
コップの山吹は一重だから、実らぬわけでもなかろうが。花を蓑代わりに道を行くのも風流だ。
「少し雲が晴れましたな。これで失礼します」
縁起に山吹を一輪いただき、帰途につく。ご利益かは分からないが、さほど濡れずに戻る事が出来た。

玄関を開けた私を見て、家人が泣き出した。
私が散歩に行った道で、大雨による崖崩れが起きていたそうだ。
ファンタジー
公開:21/05/05 18:27
更新:21/05/05 18:28
散歩道で見た シーズン4₋⑦ 山吹の恩恵 笠地蔵と兼明親王の歌

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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☆SSGと皆様のお陰で生まれた本たち
短編集『ショートショート・アソート』Ver.0~5
選集『花神の庭』
詩集『君に伝えたかったんだ。』

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.9参加中

第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版

いつも本当に、ありがとうございます!

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