隣の部屋で何が起きた？

僕のアパートの隣の部屋に外国人が引っ越してきた。
物静かなで目がギョロリとした髭の濃い男だった。
しばらくは本当に生活しているのかわからないくらい静かだった。
でもある日、突然大声で彼が叫ぶのが壁の向こうから聞こえてきた。
「何してルですか！シにますよ！だめデス！アアア！」
泣き叫び、嗚咽する声。
「違う！もっと栄養のあるモノ！卵はないですカ！あ、あ、嘘でしょ！？セーコー！！セー！コー！！！」
壁や床を激しく叩く音。
さすがにこれは尋常じゃないと思った僕は、気後れしつつもインターホンを押した。
泣き腫らした目で彼が玄関から出てきた。
「う…」
「あの、どうかされましたか？」
憔悴した顔で彼は言った。
「セツコ死にました」
どうやら部屋で『火垂るの墓』を観ていたようである。
僕は小さく頷くと自分の部屋から『となりのトトロ』のDVDを持ってきて彼に渡した。
「これでも観て元気出してくださいね」