025.黄昏

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 東大陸国の旧工業地帯は、産業黄金期の狂奔と混沌による増築と拡充により、迷宮や大樹のような様相に行き付いた場所がいくつもあった。
 "キューポラ"と呼ばれたそこも、そんな"進化"を果たした工業地帯のひとつだ。鋳造設備が密集していることから、その呼び名がついたそこは、全盛期の凄まじい排煙の処理のため、その高さを増していき、最終的には歪な鳥居を思わせる姿となった。
 想起の要因となった中央の空洞は、無計画な建設計画による偶然の産物と言われているが、それが黄昏時のキューポラに新たな様相を与えていた。
「どうだ?お前にこれを見せたかった」
「きれいね。わたしたちが通る境界はここがいいわ」
 老夫婦が、空魚の上でその光景を眺めている。
 闇に包まれるキューポラと、空洞から差し込まれる茜色の光が絶妙にすれ違う瞬間。狂騒の成れの果てであった工業地帯は、金色の光を放つ神域の入り口へと、その姿を変えていた。
ファンタジー
公開:21/05/06 08:20
工場 金魚 鳥居 黄昏

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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