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散歩中、気まぐれに声を掛けたのが最初だった。
「綺麗に咲いてるな」
道路脇のアスファルトから、タンポポが顔を出していた。車が跳ねた泥をかぶり、正直お世辞にも綺麗じゃなかった。
「頑張れよ」
多分、僕自身に言いたかったんだと思う。踏まれ放題の花と、蹴られ放題の就活生。辛いのは皆一緒だと安心したかった。
何十回目かの面接が不採用に終わった日、別の道で見た。
同じやつだと思った。汚れ方もひしゃげた葉も、這いつくばった花も同じだった。
僕は無視して通った。
就職が決まらず年を越し、町の桜も散った頃、アパートの玄関で見た。
折れ曲がった茎の先、一丁前に綿毛が開いていた。
僕は綿毛を吹いた。遠くなんて行かせない。全部足元に落っこちて、また僕みたいに、泥まみれの傷だらけになればいい。
薄青い空に飛び出した綿毛は、高く舞い上がり、太陽に綿色の暈をさした。
大きな丸印を仰ぎながら、無性に泣きたくなった。
「綺麗に咲いてるな」
道路脇のアスファルトから、タンポポが顔を出していた。車が跳ねた泥をかぶり、正直お世辞にも綺麗じゃなかった。
「頑張れよ」
多分、僕自身に言いたかったんだと思う。踏まれ放題の花と、蹴られ放題の就活生。辛いのは皆一緒だと安心したかった。
何十回目かの面接が不採用に終わった日、別の道で見た。
同じやつだと思った。汚れ方もひしゃげた葉も、這いつくばった花も同じだった。
僕は無視して通った。
就職が決まらず年を越し、町の桜も散った頃、アパートの玄関で見た。
折れ曲がった茎の先、一丁前に綿毛が開いていた。
僕は綿毛を吹いた。遠くなんて行かせない。全部足元に落っこちて、また僕みたいに、泥まみれの傷だらけになればいい。
薄青い空に飛び出した綿毛は、高く舞い上がり、太陽に綿色の暈をさした。
大きな丸印を仰ぎながら、無性に泣きたくなった。
ファンタジー
公開:21/05/02 23:00
散歩道で見た
シーズン4-⑦
道端のHalo(日暈)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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