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散歩中、ごみ置き場に奇形の枝が捨ててあった。
島国育ちはのん気ね、価値を知らないって恐ろしい。ありがたく拾おうとしたら、頭の上から声が降ってきた。
「そんなものをどうする気だ」
変種のゴブリンかしら、翼があるのは珍しい。
「ねじれの枝は良いほうきになるの。しかもこれ霊木よ。ワルプルギスの夜飛行に使えば、私が一番乗りだわ」
「テングス病だ。樹には毒でしかない」
病気?伸ばした手がひるむ。暗黒時代のペストみたいに、触ると伝染るかしら。
「それは祓われた屍だ。そもそも人にも妖に伝染らん」
翼の生えたゴブリンが、長い鼻の下で笑った。ムッとして枝をひったくり、漂う匂いに気付く。
「テングスって病気、あんたが原因なの?同じ風を感じる」
「そうかも知れんな。欲しいなら勝手に持って行け」
傷付いたみたいな声だった。
もう一度見上げた空にゴブリンはいなくて、月明かりに白い花びらが数枚、きらきら瞬いて消えた。
島国育ちはのん気ね、価値を知らないって恐ろしい。ありがたく拾おうとしたら、頭の上から声が降ってきた。
「そんなものをどうする気だ」
変種のゴブリンかしら、翼があるのは珍しい。
「ねじれの枝は良いほうきになるの。しかもこれ霊木よ。ワルプルギスの夜飛行に使えば、私が一番乗りだわ」
「テングス病だ。樹には毒でしかない」
病気?伸ばした手がひるむ。暗黒時代のペストみたいに、触ると伝染るかしら。
「それは祓われた屍だ。そもそも人にも妖に伝染らん」
翼の生えたゴブリンが、長い鼻の下で笑った。ムッとして枝をひったくり、漂う匂いに気付く。
「テングスって病気、あんたが原因なの?同じ風を感じる」
「そうかも知れんな。欲しいなら勝手に持って行け」
傷付いたみたいな声だった。
もう一度見上げた空にゴブリンはいなくて、月明かりに白い花びらが数枚、きらきら瞬いて消えた。
ファンタジー
公開:21/05/02 20:33
更新:21/05/02 21:09
更新:21/05/02 21:09
散歩道で見た
シーズン4-⑥
てんぐす病、別名
witch's broom
(魔女のほうき)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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