夢の現実

夢が現実になる。
本当に夢のような薬を貰った。
これで彼女を救えるなら…。
俺は薬を飲んで、夢の中に落ちた。
落ちた先は何も見えない暗闇の世界。
目の前から少しずつ光が近づいてくる。
光の正体は、彼女だった。
交通事故で重傷を負ったはずなのに、何事もなかったかのように笑っている。
よかった…元気になったんだ。
そう思った瞬間、彼女は石になり粉々になった。
光は消え、暗闇が再び俺を襲う。
…救いなんて、なかった。

目を覚ますと病院の廊下の椅子に座っていた。
夢でよかった…とはいえない。
現実に戻ってきてしまったのだから。
顔を上げると医師が立っていた。
「無事、手術が終わりました。危険な状態でしたが、もう大丈夫です」
医師の言葉で身体の力が抜けていく。
夢が現実になる薬は睡眠薬だった。
長時間の手術、不安で動揺していた俺を心配してくれたのだろう。
夢が現実にならなくて、本当に…よかった。