ペットボトルインク

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「ねえ、見て…?」
震える声で少年が暗がりを指差す。
その先には、真っ黒な浮遊する見覚えのある形…

「…クラゲ?」

僕のつぶやきに彼はハッとして、叫んだ。

「ジェリー!」

その瞬間に黒いもやは消え、キラキラとした虹色のクラゲが現れた。
ぼくは、そいつのことを思い出した。

ちょうど一年前。
絵の得意な少年が、売り切れ続出の魔法の「ペットボトル」を手に入れたと、目の前で描いて見せてくれた。
念じるだけで、いつでもどこにでも描ける絵の具が作れるのだ。
キラキラとした軌跡が徐々に形をとり……

「くらげだ!?」
「へへっ。好きだろ?」
「ジェリーって名前にしようよ!」


魔法のインクで描かれたものは、忘れられると色がくすんでいき、幽霊のようになる。
僕たちが思い出したので、ジェリーも元に戻った。
今は、上描きで小さくなり、僕たちの肩に乗っている。
もう、忘れないよ。
ファンタジー
公開:21/05/03 19:05

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